平良菜園

平良そわかの、雑記帳、備忘録です。

お国言葉

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17年育ててもかたくなに猫語しかしゃべらない猫

 

関西出身者はどこに住んでいても関西弁を貫きがち。

だが私は標準語と関西弁(京都弁と大阪弁のミックス)をきっぱり使い分けている。

家では関西弁、外では標準語。

 

オットも同郷なので、家では二人とも関西弁しか喋らない。

おかげで100%横浜育ちの長男君もネイティブ関西弁話者。

友だちとは標準語で喋っているが、時々なまってておかしい。

 

横浜に引っ越してきた当初、私は外でも関西弁で通そうとしていた。

が、早々にあきらめた。

 

理由はふたつ。

まず、当時の職が「進学塾の講師、それも国語の講師」だったため、

「標準語圏のキッズに関西弁で国語を教える」のはムリがあった。

キッズが私の教える内容ではなく私の喋る言葉のほうに

興味を持っていかれてしまうのだ。

 

二つ目は、会う人会う人に「関西のご出身なんですか?」と聞かれ、

「関西のどちらですか?京都ですか、京都いいですよね~」

から始まる同じパターンの会話に毎回つきあわなければならないこと。

いや、褒めてくれはるんは嬉しいのよ。

けど私、言うても京田辺やし。大阪に住んでた時期も長いし。

毎度毎度(相手は違えど)同じラリーを繰り返すのは正直ダルいし。

 

というわけで、今では外面だけすっかり横浜人。

そのほうが気楽でいい。

 

ところで、関西にいたときから気になっている言い回しがある。

「いる」「する」「来る」の、関西弁の否定形(=未然形)が多すぎるのだ。

 

「いない」は「いーひん」「いーへん」「いやへん」。

さらに、関西においては「いる」と「おる」が混じってるので、

「おる」の否定形の「おらへん」「おれへん」「おらん」も同じ意味で使われる。

「いーひん」「いーへん」「いやへん」「おらへん」「おらん」「おれへん」、

多すぎやろ。

 

同様に、

「しない」は「しーひん」「せえへん」「しやへん」「せん」。

あっチガウ、「しやん」もあるな。5種類か。

「やる」の否定形である「やらへん」「やらん」も同じ意味で使われるので、

それも加えると7種類。

 

「来ない」は、「きいひん」「きやへん」「こーへん」「きーひん」「こん」、

計5種類。

 

「いやへん」「しやへん」「きやへん」は、京女しか使わない気もするけど、

なんせバリエーションありすぎや。

 

お国言葉って豊潤でおもしろい。

国語っておもしろい。

 

私の父は大阪市内の出身で、ときどき古い船場言葉を話す。

父の母=私の父方の祖母が、

船場の商家の「ええしの子(=いいお家の子)」だったそうなので、

それ由来だと思う。

 

「ちょっと場所変えたいからこの机かいでんか」は、

「持ち上げて運んでくれないか」ということだ。

“駕籠舁き”の“舁く”だろな。

 

すまんだでいじけてんとこっち来て一緒に食え」は、

「すみっこ、片隅」である。

上方の古典落語なんかに出てくる言葉だと思う。 

 

こういう、すでに歴史の地層に埋もれかけている各地のお国言葉は

星の数ほどあるはず。

日本全国の言葉が均質化してしまったらすごくつまらないので、

生きた形で残っていってほしいものであるなあ。